そういち総研

世界史をベースに社会の知識をお届け。

現代社会・時事問題

日中戦争とウクライナの戦争の類似性

ロシアによるウクライナ侵攻の経緯をみていると、「日本が中国に侵攻した日中戦争(1937~1945)と似たところが多々ある」と近頃思うようになりました。 まず、日中戦争はどんな経緯だったか。以下、ごくおおまかに述べます。 目 次 満州事変 日中戦争の始ま…

大国の「狭間の国」ウクライナ・その壮絶な歴史を知る

はじめに この世界には「狭間の国」といえる国家が存在します。複数の大国に囲まれ、たえずその勢力争いに巻き込まれてきた国です。 今世界から注目されるウクライナは、典型的な「狭間の国」といえるでしょう。以下、その視点でウクライナの歴史をざっと述…

リベラル(リベラリズム)・保守・新自由主義・ポピュリズムとは さまざまな政治思想・主義の入門的な解説

選挙などで政治がとくに話題になるとき見聞きする「リベラル」「保守」「新自由主義」などの、政治的立場にかかわる用語。それらの意味や成り立ちについて解説します。 目 次 リベラルとは何か リベラルの歴史 保守とは何か 保守の歴史 保守と革新・戦後の日…

一気に読めるアフガニスタンの歴史入門・なぜ混乱が続くのか・基本の知識と視点

はじめに アフガニスタンについては、今いろんなことが論じられていて、それらをいくらかでもまじめに追っていると頭が混乱してしまいそうだ。この記事では、アフガニスタン情勢についてのニュースなどをより深く理解するための基礎知識を述べる。アフガニス…

スペイン・インフルエンザ(スペイン風邪)における大正時代の日本政府の対応・今のコロナ禍との比較

はじめに 最近、速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』(藤原書店、2006)を読み返した。第一次世界大戦末期の1918年から終戦直後の1920年まで世界的に流行した、「スペイン風邪」ともいわれたインフルエンザの、日本での状況について述べた本であ…

主要国比較 乳児死亡率・犯罪の発生率が高い国は、コロナの被害が大きい?

目 次 先進国のあいだでもコロナの被害状況が大きくちがう 主要国の人口100万あたり新型コロナ死者数 被害の程度で3つのグループに分ける 社会の特徴のちがいとコロナの被害 裏付けとなる社会統計のデータはないか 乳児死亡率 アメリカの乳児死亡率の高さ …

「共和国」「王国」とは何か 国の名称や体制についての基礎知識・その1

「共和国」「帝国」「連邦」のような、国の体制に関する名称について、基本的な意味を確認しておこう。歴史や社会を知るうえでの基礎概念である。この記事では「共和国」について。この記事で述べる定義・説明(一部) 【共和国】国王のいない国【国王】世襲…

ベネチア(ヴェネツィア)共和国の歴史に学ぶ、ゆるやかで幸福な没落

目 次 これからの繁栄の基盤は? ベネチア(ヴェネツィア)の発祥 貿易の発展・最盛期へ 環境の変化 ベネチアと日本の歩みの共通点 変化への対応 1600年代における経済の再編 「文化国家」への変貌 1700年代の「観光立国」化 これからの日本の選択肢「ベネチ…

都市への集中・都市化は、はたして「異常」なのか? 都市の歴史から考える

目 次 「アンチ都市」の主張 文明の副作用をどうするか メソポタミア文明の都市化率 100万人都市ローマという到達点 1800年代ロンドンの環境改善 文明国で都市が衰退した事例 都市が衰退するのは、きびしい・不幸な時代 「アンチ都市」の主張 日本経済新聞(…

デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』 「どうでもいい仕事」が蔓延する現代社会

目 次 「どうでもいい仕事」が増えている 昔はコンプライアンス部なんてなかった 「社会に必要な仕事」の待遇 現象に名前をあたえて問題提起した ブルシット・ジョブは、先進国におけるレント(利権)の肥大化 仕事の本質は「苦行」ではなく「ケア」 良書だ…

少子化の根底にある「リスク回避」と「世間体」 山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』より

社会学者・山田昌弘の『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(光文社新書、以下本書という)を読んだ。サブタイトルの「結婚・出産が回避される本当の原因」について論じた本。少子化だけでなく、さまざまな問題にかかわる日本社会の特質について考えさ…

「コロナ以後」を考えるための感染症の歴史的事例・「中世のペスト」より「ビザンツのペスト」が参考に

「感染症の大流行がその後の社会に与えた影響」を考えるうえで、よく引き合いに出される「中世ヨーロッパのペスト」の事例。これは、じつはあまり参考にならない。発展途上の新興地域だった当時のヨーロッパと、成熟社会の現代の先進国とでは、条件がちがい…

ファクターXの根底にあるのは「個人主義の弱さ」「同調圧力」か?

目 次 マスクと手洗い 感染は自業自得か 人口あたりの感染者数 東アジアの共通性 個人主義が弱く、かつ経済発展が進んでいる 東アジア的アプローチの限界 合理的アプローチが弱かった日本 マスクと手洗い 「ファクターX」とは、ノーベル賞の山中伸弥教授が…

感染症によって、世界はどう変わってきたか。新型コロナ以後どうなるのか

当ブログでは、このところ「感染症とは人類にとって何か」というテーマに沿った記事を続けてアップしています。2020年4月19日の記事では「感染症は、文明に必然的に伴う副作用」であるという、基本となる見方を述べました。4月23日には「とくに知っておくべ…

感染症は、文明に必然的に伴う副作用である。それを新型コロナを通じて再認識した。

「感染症とは人間にとって何か」ということを、新型コロナの問題に直面している今、考えてみたいと思います。私の場合は、それを世界史を通して考える、ということになります。 目 次 感染症は文明の副作用 都市文明以前・以後 絶えず苦しんできた歴史 「文…

専制(独裁)国家・中国の社会構造と行動の特徴 新型コロナウイルス(新型肺炎)への対応からみえるもの

今回の新型コロナウイルス(新型肺炎)の問題への一連の対応には、中国の社会構造や行動パターンの特徴がよくあらわれている。それは一言でいえば「やはり中国は独裁(専制)国家」ということだ。そして、中国と対比することで、日本の特徴もみえてくる。日…

日本と世界の文化で創造の活力が低下している? 今年見た展示などを振り返って・高畑勲展ほか

今年2019年に見にいったいくつかの展示や作品……建設中の国立競技場、高畑勲展、建築家のアアルトやル・コルビュジエ、現代芸術のトム・サックス展。どれも興味深かった。一方で「今の時代は画期的な新しいものが生まれにくくなっている」という、創造におけ…

久し振りの「怒れる若者」 グレタ・トゥンベリさんの演説

かつての「怒れる若者」の時代 9月23日、国連の「気候行動サミット」で怒っていたグレタ・トゥンペリさん。16歳、スウェーデンの環境活動家。おそらく今の世界で一番有名な環境活動家だ。集まったエライ人たち――結局何も決められなかった――に対し「あなたた…